国道118号を大子方面に向かって北上していくと、左手に「旧家和楽青少年の家」の施設群が見えてくる。これを過ぎ少し下ると左手が開け、久慈川に架かる沈下橋、平山橋が見える。信号を左に曲がって下りていけばその欄干の無い、すれ違いもできない素晴らしい橋を渡ることになるのだが、そこは左ではなく右に曲がる。
入り口が細いので不安になるが、ぐっと腹を引き締め進んでいきましょう。崖沿いの細くてガードレールも無い、危なげな道を少し進むと舗装された道路に出るので、道なりに進んでいけば左側に湧き水が出ている。国道からは2、3分。
地主の方が整備されたのか、なかなか立派な水場である。手作り感の強い装飾がいろいろと施されていて、何か親しみの持てる湧き水なのだ。コンクリート壁から湧出しているので、道路拡張の際に発見されたのではないだろうか。

←2011年に訪れたときには、年始だったこともあって立派な注連縄が飾られていた。注目すべきは湧出口の管で、明らかに男根を模しているのである。男根からこんこんと湧き出る
小便清水。すばらしい。
このシンボルに、豊穣と安産を祈願した金精信仰の豊かなヴァリエーションを見ることができる。だいたい山里にひっそりと祀られていることが多いんですけど、湧き水汲みに来て見

られるなんて、これはなかなかレアですよ。それとも男根に見過ぎ? 単純に山ン中だからきのことかだったりして。

←2013年に再び訪れた際には、男根と思しき注ぎ口は外れてしまったのか外されてしまったのか、何の変哲もないビニールのパイプ管になっていた。
ところで右側に見える縦長のモニュメント、気になりません? これ太い木の幹で中が空洞になっており、水神さまが祀られている。11年に来たとき

には確かこんな札は無かったので、男根さまから水神さまへとより「らしく」祀る対象の変更があったと思われる。

さらに、「この湧き水は水質検査してありません」という看板に、再訪問時には手書きで「保健所で検査済ずみ」「OKです」との文字。11年3月の震災で断水したときに、ここも利用される頻度が増したのだろう、それに伴って水質検査をしたのだと思われる。願わくば、調査結果と成分表を貼り出してもらえればなあと思う。硝酸値や、pH値とか知りたいじゃないですか。ぜひお願いします!
ロケーションとしては、特に変哲のない杉林の山裾から湧き出ている(すぐそばに沢も流れている)。強いて言えば熊の山(310m)の南麓ということになる。ただ、上部西側に民家と畑が点在しているのでそれがどうかということになる。水質検査しているとのことなので大丈夫だとは思うけれど。味は清涼。湧出量は13年1月時で約50ml/秒。4Lのペットボトルを77~79秒で満たす。夏場はもう少し少なくなると思うけれど、冬場でもそれほど多く湧出しているわけではない。
このさらに北には、茨城有数の名峰、奥久慈男体山がそびえる。さらにはそこから流れ下ってくる湯沢峡と、まさに湧き水がありそうなロケーションだが、知られた湧き水はごく僅かだ。しかも国道からのアプローチも容易で(県内のR118沿いでは大子町の命泉水のほかに、これほど近場に湧き水はほぼ存在しない)、その意味でもここは非常に貴重である。手軽な湧き水スポットのひとつとして是非ストックしておいてほしい。ではまた!
2013.3 約3.1L/min(4リッターを77~79秒)